5月5日、ゴールデンウィーク最終日、天気 晴れ。
ぼくは青空に近い場所で
今年最初のクレマチス眺めながら 彼女のことを考えていた。
入学したての頃、名字が「わ」行だったせいで 席がとなり同士だった。
偶然同じ部活になって、
一日のほとんどを同じ空間で過ごしていたのに、
週番の日誌をわたすときでさえ、あまりしゃべらなかったよね。
二年になってクラスがわかれてからも、
休み時間の廊下の隅に 君の姿 さがしてた。
一度だけ、ぼくら
昼休みの部室でふたりきりになったことがあったよね。
あれもよく晴れた5月の日、
窓際に 花壇からつるを伸ばした クレマチスが満開だった。
彼女は小さな声で、
ほんとうに小さな声でひとことだけ「きれい」と言った。
今なら言える、早く話しかけるんだ、早く!
早く!
あのとき、
ぼくがうまく想いを伝えていたなら、未来はちがっていたのかな?
出席番号21番だったぼくが
今年のクレマチスの下で缶のビールを飲み干すころ
出席番号43番の彼女は
「あ」行の名字になって 新しい人生歩みはじめた。
<2003.5.5>
|