満月がのぼる。 やわらかな光に誘われて、僕ら車を走らせる。 地図はいらない 君とこのまま 迷子になりたい。 うねる坂道をゆっくりと登ると 僕らの街では新緑にかわった桜が ここでは今、満開。 月あかりに照らされて ぼんやりと白く光っている。 「ねえ、きっと山奥で 人知れず 毎年 咲いては散ってゆく桜もあるんだよね。」 と、君が言った。 たどりついた そこは、月の峠。 ここにはもう 誰も来られない。 真夜中、 僕ら 人知れず 月あかりに照らされて ぼんやりと白く光った。 <2003.4.16>