夕方の庭に たちこめる 水の匂い。 つる植物ばかり育てる女と暮らす。 右巻きにうずまく緑色の先端に、 そっと触れる 白い指先。 他愛もない植物の しなやかな欲望は、 ぼくの中の螺旋の記憶 呼び覚ますのか 夕凪の庭に むせかえる 水の匂い。 遠く響くセミの声も 聞こえないくらいに 夏が、ただ夏だけが 熟れてゆく <2003.8.21>