春は南から汽船にのってやってくる。 島の南端の港にたどりついたら、 そこから各駅停車を乗り継いで ゆっくりとここまでやってくるのだ、と彼女はいう。 今日、遠い国でいさかいが始まって、 ぼくらはそれを レンタルビデオ屋で借りてきた誰かの物語みたいに、 ソファに座って観てる。 「こんな日が特別な日になるのはイヤだよね」 二人の名前を並べて書いた紙きれは 今日も出鼻をくじかれて冬眠続行。 引き出しの中で、春を待ってる。 春は南から汽船にのってやってくる。 島の南端の港にたどりつけずに、 どこかでいさかいに巻き込まれて いつもより着くのがおくれているのだ、と彼女はいう。 誰もが誰かを幸せにできたら、 めぐりめぐって皆が幸せにはなれないの? 平和な島の平和な街の片隅にあるソファに座って ぼくらはただ、想うことしかできないんだ。 <2003.3.19> |