老婆はその温かな手のひらでぼくの背中をひとしきりなでたあと、カウンターに戻って手早く何かを沸かした。 静かな店内にコポコポという優しい音が響いた。 背中に感じる湯気の温もり。戻ってきた老婆から差し出されたそれは、 淡い緑色のマグカップに入ったホットミルクだった。 ぼくは泣きじゃくった顔のまま、振り返らずに軽く会釈をし、そのカップを両手に受けとった。 ーーー温かい。